1994年(平成6年)平和宣言
平和宣言
新緑芽生えるうりずんの季節が過ぎ、今年も、私たちが永遠に忘れることのできない「慰霊の日」を迎えました。
私たちは、太平洋戦争最後の激戦地となったここ摩文仁の地で、悲しみも新たに、沖縄戦で亡くなられた20万余の方々の御魂に心から哀悼の誠を捧げるとともに、恒久平和への誓いをいちだんと強めるものであります。
いま世界は、ソ連邦の崩壊により、東西の冷戦が終結し、新たな秩序を構築しなければならない重大な時期にあります。しかし、旧ユーゴスラビアやアフリカの民族紛争をはじめ、難民問題、さらには、飢餓に苦しむ人々の激増など、いまだ悲しむべき状態にあります。
一方、本県は、日本に復帰して20年余が過ぎたいまもなお、巨大な軍事基地をかかえ、基地から派生する事件や事故も後を絶ちません。軍事基地は、県民生活に様々な悪影響を及ぼしているばかりか、沖縄の自立的経済発展の基盤づくりのうえからも大きな制約となっています。しかも、つい最近は、「復帰時に日米両国首脳が、有事の際沖縄へ核を持ち込むことができるとの密約を交わした」という趣旨の証言が公にされ、県民に改めて「核」についての不安を与えています。
かつて私たちの祖先は、すべての武器を廃棄し、国の内外において「平和愛好の民」として知られ、近隣諸国との交易を通じて積極的に友好関係を結び、独自の文化と平和な社会を築き上げてきました。
私たちは、祖先からこの平和を大事にし、何よりも“共生”を志向する「沖縄のこころ」を受け継ぐとともに、去る沖縄戦で10数万余の県民の貴い生命とかけがえのない貴重な文化遺産を失うに至った経験に学び、平和への志向をいちだんと深めてきました。
戦争終結50周年の節目を迎えようとしているいま、私たち沖縄県民は、改めて次のことを世界の人々に訴えます。
私たちは、沖縄県民の長年の悲願である、軍事基地の整理・縮小、ひいては撤去を強く求めます。
私たちは、広島・長崎の惨劇を再び繰り返さないためにも、沖縄をはじめ日本国内への核兵器の持ち込みを拒否します。また、人類を破滅に導く「核兵器」の廃絶を強く求めます。
私たちは、世界が対話と協調を求め、新たな平和秩序の確立に努めている今日、戦争を排し、平和と民主主義を基本理念とする日本国憲法の崇高な精神を、世界の人々が共有し、その実現に努力するよう、切に希望します。
申すまでもなく、世界の恒久平和を樹立するためには、国家は言うに及ばず、個々の自治体をはじめ、私たち一人一人の自覚と責任の遂行が不可欠となります。私たちは、単に戦争を排除するだけでなく、貧困や飢餓の問題をはじめ、差別や暴力、人権抑圧から環境破壊の問題に至るまで、平和を脅かすあらゆる要因をなくすため最大限に努力する必要があります。
沖縄県はいま、去る太平洋戦争で犠牲となったすべての戦没者の御魂を慰めるとともに、我が県を世界への平和の発信地とするため、国籍や軍人、非軍人のいかんを問わず、犠牲者御一人一人の氏名を石に刻んだ「平和の礎(いしじ)」の建設を進めています。
沖縄全戦没者の追悼式に当たり、私たちは、平和を尊び“共生”を志向する「沖縄のこころ」をもって、世界友好の懸け橋となり、恒久平和への道がいかに困難でも、その実現のため全力を傾けることを、ここに高らかに宣言します。
平成6年6月23日
沖縄県知事 大田昌秀
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