疫学統計・解析委員会資料

ページ番号1018235  更新日 2024年1月11日

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解説および資料(令和3年8月9日-8月15日)

現状

沖縄県における先週(8月9日-15日)の新規陽性者数は、4,138人(先々週 3,712人)でした。沖縄本島(周辺離島を含む)における週あたりの実効再生産数(R)は1.05 (95%CrI:1.01, 1.08)であり、先週の1.64から勢いを落として、報告に基づく限りは流行は横ばいとなりつつあります(図1)。

ただし、陽性者数の増大とともに保健所による調査が十分に行えなくなっており、接触者に対する検査が滞っている可能性があります。実際、新規陽性者のうち無症候者(診断時)が占める割合は、先週は12.8%であり、7月の17.0%より低下しています。また、有症状者においても、検査へのアクセスが低下したり、報告の遅れが生じたりしており、新規陽性者数が流行の実態を反映できていない可能性があります。

グラフ:陽性者数の推移と実効再生産数(北部、中部、南部)

グラフ:沖縄県における性年齢階級別症例数(8月9日~15日)

年代別では、20代が1,014人(25%)と最多であり、30代 745人(18%)が続きます。性比では男性に多いことも含めて、これまでと傾向は変わりません。70代以上の高齢者が占める割合は4%と低く、一方で未成年が23%を占めています。ただし、先々週までみられた未成年における急速な増加は収まっています(図2)。

園児、生徒、学生の感染者割合が、全体の16%を占めています。内訳は、保育園・幼稚園児 58人(先々週 63人)、小学生 234人(先々週 257人)、中学生 144人(先々週 104人)、高校生 89人(先々週 118人)、大学生 53人(先々週 39人)、専門学校生 30人(先々週 36人)でした。

保健所による疫学調査によると、小学生の新規陽性者の推定感染経路は、家庭 123人(53%)、学童クラブ 20人(9%)、親族 11人(5%)、その他 2人(1%)、不明・調査中 78人(33%)でした。同様に、中学生では、家庭 63人(44%)、塾 13人(9%)、親族 5人(3%)、友人 4人(3%)、その他 3人(2%)、不明・調査中 56人(39%)でした。

18歳以上の新規陽性者 3348人のうち、疫学調査で職業等が明らかになったのは2030人でした。職業別で最多だったのは建設業従事者 188人(先々週 161人)でした。次いで、飲食店従業員 175人(先々週 193人)、小売店従業員 99人(先々週 94人)、観光従事者 52人(先々週 72人)、医療従事者 52人(先々週 75人)、介護従事者 45人(先々週 27人)、保育従事者 45人(先々週 43人)と続いています。介護従事者が増加してきており、今後、高齢者への影響が心配されます。

グラフ:医療圏別にみる新規陽性者数の推移

医療圏別(先週7日間合計)では、北部 175人(先々週 145人)、中部 1639人(先々週 1557人)、那覇市 987人(先々週 918人)、南部 881人(先々週 893人)、宮古 203人(先々週 89人)、八重山 181人(先々週 73人)でした(図3)。本島中南部での増加が鈍化しており、代わって、宮古、八重山で急速に増加しています。

那覇市の実効再生産数(R)は0.96 (95%CrI:0.90, 1.02)、宮古医療圏は2.35 (95%CrI:2.01, 2.70)、八重山医療圏は2.22 (95%CrI:1.87, 2.59)でした。また、新規陽性者のうち、診断時に無症候だった者が占める割合は、北部 3%、中部 3%、那覇市 15%、南部 22%、宮古 35%、八重山 11%でした。

グラフ:那覇空港乗降客数と新規陽性者数の推移

疫学調査で、渡航歴を確認した者は68人(1.6%)でした。内訳は、県外からの渡航者 60人(先々週 36人)、県外へ渡航した県民 8人(先々週 16人)であり、本土での流行を受けて増加しています。昨年は7月末の4連休以降、渡航者の数が減少していましたが、今年の夏休みは増え続けています(図4)。

グラフ:市町村別にみる新規陽性者数(先週の上位10市町村)

市町村別(先週7日間合計)では、那覇市 987人(先々週 917人)、沖縄市 536人(先々週 534人)、うるま市 435人(先々週 467人)、浦添市 285人(先々週 310人)、宜野湾市 246人(先々週 215人)でした(図5)。とくに急速な増加を認めたのは、与那国町(5.3倍)、宮古島市(2.3倍)、石垣市(2.2倍)、恩納村(1.7倍)、読谷村(1.6倍)であり、都市部に遅れる形で地方でも新規陽性者数の急速な増加を認め始めました。

グラフ:新規陽性者数および重症度別入院患者数

入院患者数は、先週(8月14日時点)645人(8月8日時点 618人)と過去最多となっています。酸素投与など中等症患者は547人(8月8日時点 486人)に至っており、入院患者に占める割合は79%から85%に増加しました。沖縄県の医療ひっ迫が進んでいることで、入院の基準が厳しくなってきていることが伺えます。また、気管挿管など重症患者も19人(8月8日時点15人)と増加しています(図6)。重症者への医療提供も厳しくなっています。

イラスト:今後1週間(8月16日~22日)の発生見込み数の表

今後の見通し

沖縄県内では、感染拡大が続いています。一部地域で外来や検査の応需体制が限界となっており、軽症者のPCR検査は数日待ちとなっています。保健所業務もひっ迫していることから接触者スクリーニングが従来のように行えていません。実効再生産数が1.05と低下してきたように見えますが、実態を反映しきれていないと考えられます。

中南部における加速度的な増加は収まり、持続流行のフェーズへ移行しようとしています。このまま500-600人/日前後で推移させるか、あるいは少しずつ減少させていくことができるか、沖縄県は重要な局面にあると言えます。今週の新規陽性者数は3,000-5,000人程度と予想されますが、できるだけ速やかに減少させなければ、医療サービスが受けられずに死亡する患者が多発しかねません。

本来、入院すべきであろう患者数については、今週末までに800-1,000人と増加が見込まれます。ただし、病床確保が限界を迎えているため、実際に入院できるのは700人前後と予測され、100-300人程度が自宅や施設での療養を余儀なくされる可能性があります。中等症以上の患者についても、すでに在宅酸素による治療が始まっています。気管挿管等を必要とする重症患者数も増加傾向が続くと予想され、今週末には25-35人に至ると推定されます(図7)。

「沖縄県疫学統計・解析委員会資料」

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