議会提案説明(平成31年第2回沖縄県議会定例会)(Ⅰはじめに)

ページ番号1001642  更新日 2024年1月11日

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知事提出議案説明要旨
(平成31年2月13日提出 沖縄県)

1.はじめに

ハイサイ、グスーヨ-、チューウガナビラ。

平成31年第2回沖縄県議会の開会に当たり、議員各位の御健勝を心からお喜び申し上げますとともに、日々の御精励に対し深く敬意を表します。
平成31年度の当初予算案などの重要な議案の審議に先立ち、まず、県政運営に当たっての私の所信の一端を申し述べ、議員各位及び県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

第1に、「県政運営に取り組む決意について」申し上げます。

私は、先の県知事選挙において、辺野古新基地建設の阻止、経済と平和の両立という翁長雄志前知事の政策の継承、新時代沖縄に向けた私自身の公約を掲げ、当選いたしました。

私は、祖先(ウヤファーフジ)への敬い、自然への畏敬の念、他者の痛みに寄り添うチムグクルを大切にするとともに、「自立」、「共生」、「多様性」の理念の下、包摂性と寛容性に基づく政策を推進し、本年を全ての人の尊厳を守り、誰一人取り残すことのない社会づくりのスタートの年にいたします。

経済面では、アジアの中心に位置する地理的優位性と、沖縄が誇るソフトパワーなどの強みを活かし、アジア諸国との経済交流に向けた連携を強化し、県経済の発展及び県民所得の向上を図ってまいります。
アジアのダイナミズムを県経済に取り込む千載一遇のチャンスと捉え、「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」に基づく施策を推進し、沖縄経済の成長及び発展を実現してまいります。

また、ダイバーシティ(多様性)、デモクラシー(民主主義)、ディプロマシー(自治体外交)の考え方を県政の取組に活かすため、来年度に万国津梁会議(仮称)を設置し、平和、経済、文化、教育等の各領域において高い見識を有する方々に参加していただき、この会議での議論を更なる政策の推進につなげてまいります。

私は、日米安全保障体制の必要性は理解しておりますが、戦後73年、施政権が米国から日本に返還されて46年を経た現在もなお、国土面積の約0.6パーセントに過ぎない沖縄県に米軍専用施設の約70.3パーセントが集中し続けている状況は異常と言わざるを得ません。我が国にとって日米安全保障体制が重要であるならば、本来、その負担も日本国民全体で担うべきであります。
このような基本認識の下、沖縄の過重な基地負担の軽減に取り組んでまいります。

特に、辺野古新基地建設問題については、司法ではなく対話によって解決策を求めていくことが重要と考えております。同時に、世界一危険と言われる普天間飛行場の固定化は絶対に許されないと考えており、辺野移設に関わりなく、同飛行場の県外、国外への移設、早期返還及び5年以内の運用停止を含む危険性の除去を政府に対し強く求めてまいります。
私は、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向けて、ぶれることなく、全身全霊で取り組んでまいります。

また、「子どもの貧困対策」を最重要施策に掲げ、全庁的な取組をもって貧困の連鎖を断ち切り、全ての子どもたちが夢や希望を持って成長していける社会を実現してまいります。

離島振興については、離島の諸課題を把握し、条件不利性を克服するため、交通・生活コストの低減、教育、医療、福祉等の定住条件の整備や、離島地域の特色を活かした産業の振興を推進してまいります。

県民がウチナーンチュとしてのアイデンティティーを確認し、沖縄(ウチナー)文化の根底をなすチムグクルを育むことができるよう、「琉球歴史文化の日」(仮称)を制定し、沖縄文化の更なる普及、継承、発展及び発信に取り組みます。

未来を担う子どもたち、若者たちに、平和で真に豊かな沖縄、誇りある沖縄、「新時代沖縄」を託せるよう、職員一丸となって公約に掲げた諸施策を着実に推進し、全力で県政運営に当たる決意であります。

第2に、「沖縄を取り巻く現状の認識について」申し上げます。

国際社会においては、モバイル端末やSNSの普及が人々の生活を大きく変え、AIやIоT、自動運転といった次世代技術の開発が進んでおります。これらのデジタル技術を始めとするイノベーションの進展とともに、実体経済のグローバル化と金融システムの発達により、世界経済の相互依存は一層強まっております。
一方、欧米の主要国では、国内所得格差の拡大等を背景に反グローバリズムの機運が生じております。
昨年から続いている米中の貿易摩擦については、2国間のみならず、貿易に支えられ回復基調にある世界経済への影響が懸念されます。

また、朝鮮半島における昨年4月の南北首脳会談、6月の史上初の米朝首脳会談により、朝鮮半島の完全な非核化に向けた意思が明確に示されたほか、日中関係においても首脳会談が開催され、東アジアの緊張緩和に向けた動きが見られます。

我が国においては、政府の平成31年度の経済見通しによると、10月の消費税率の引上げを踏まえた経済対策等の効果も相まって、雇用・所得環境の改善が続き、内需を中心とした堅調な景気回復が見込まれております。

一方で、企業の人手不足は全国的な課題となっており、その解決に向け、労働環境の改善や女性・高齢者の労働参加を促すための働き方改革、幅広い外国人材の受け入れに向けた取組が進められております。

こうした中、沖縄県の経済は、国内景気の回復や入域観光客数の増加を背景に、観光需要や個人消費が拡大し、民間設備投資も増加するなど、平成24年以来、6年にわたり景気拡大が続いております。県経済は今年も好調を維持すると見込まれますが、10月の消費税率の引上げによる県民や観光客の消費活動への影響については留意する必要があります。

平成30年の入域観光客数は約984万人で、6年連続で過去最高を更新し、情報通信関連産業についても、雇用者数は45,000人、売上高は4,300億円を超えるなど好調を維持しております。

また、直近の平成30年12月の有効求人倍率は1.23倍となり27か月連続で1倍を超えており、完全失業率も昨年7月には44年振りの2パーセント台を記録するなど、雇用情勢も好調に推移しております。

アジア各地と那覇空港間の直行便数については、平成24年度末の週49便から平成30年12月末には週235便と大幅に伸びており、同空港における農林水産物や食品の輸出額も増加しております。

さらに、県外及び外資系企業によるリゾートホテルの進出が続くなど、沖縄の発展可能性に国内外のマーケットから評価が高まっています。

また、尖閣諸島を巡る情勢につきましては、中国公船が領海侵入を繰り返しており、宮古、八重山地域の住民に不安を与えております。県民の平穏な生活環境及び県内漁業者の安全確保に向けて、国に要請するとともに、国の関係機関との連携を強化しているところです。県としても、文化や経済など多面的な分野の交流を通じ、諸国民との信頼の構築を図
り、地域の平和と発展に貢献してまいります。

第3に、「今後の沖縄振興に向けた取組について」申し上げます。

平成31年度は、これまで実施した沖縄振興計画に基づく各種施策等の課題や対策について総点検を行い、新沖縄発展戦略を踏まえ新たな沖縄振興計画の検討に着手するとともに、残り3年となる沖縄21世紀ビジョン基本計画の総仕上げに向け、各種施策に全力で取り組む年となります。引き続き、県民所得の向上、子どもの貧困の解消、過重な基地負担の軽減等の重要課題に対応した施策を着実に推進してまいります。

また、私は、公約に掲げた「新時代沖縄の到来」、「誇りある豊かさ」、「沖縄らしい優しい社会の構築」の3つの視点を踏まえ、好調な経済の更なる発展と沖縄らしい優しい社会の構築に向け、経済、文化、教育、福祉、保健医療など、あらゆる分野の公約の実現に邁進してまいります。

「新時代沖縄の到来―経済分野―」については、成長するアジア経済に連動し、「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」に基づく取組を一層推進します。
昨年11月のアジア経済戦略構想推進・検証委員会の提言も踏まえ、観光リゾート産業や情報通信関連産業等のリーディング産業の拡充・強化、国際物流拠点の形成などをスケール感とスピード感を持って推進し、2021年度の目標である県内総生産5兆1千億円の達成や県民所得の向上に向けて取り組んでまいります。

昨年5月に設立した一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センターを司令塔として、Society5.0に対応した情報通信産業の振興を図るとともに、沖縄の多くの産業にAI、IoTなどの先進的なITを活用することにより、生産性向上、高付加価値化の推進及び新ビジネスの創出を目指します。

また、医療機関等との連携により、再生医療等の先端医療の産業化に向けた研究を推進するとともに、医療機器の開発・製造基盤の創出に向けた包括的な支援体制の構築に取り組んでまいります。

沖縄MICE振興戦略に基づき、産学官連携による国内外のMICE誘致、受入体制の強化、人材育成等に取り組み、MICE推進による各産業分野の成長発展とブランド力の向上を図ります。あわせて、沖縄の成長可能性を引き出す大型MICE施設や東海岸一帯の賑わいの核となるエリアの形成に向け、取り組んでまいります。

那覇港において、クルーズ需要の増大及び大型化に対応するため、新港ふ頭地区への22万トン級のクルーズ船が寄港可能な第2クルーズバースの早期整備に取り組んでまいります。

また、航空機整備を中心とする産業の集積を目指し、航空関連産業クラスターの形成を図ります。

3月に旅客ターミナルが開業予定の下地島空港については、宮古圏域の観光客の増加に寄与することから、一層の利用拡大に取り組みます。

また、畜産物、水産物等の県産ブランド化と海外輸出体制を強化するため、高度衛生加工処理施設の整備等を促進します。

沖縄が世界に誇れる観光リゾート地として発展していくことを目指すとともに、県民生活と調和した持続的な観光振興を図るため、観光・環境協力税(仮称)の早期の導入に向けて取り組んでまいります。

鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入については、事業の実現に向けた詳細な検討を行うとともに、国に対し、公設民営型の上下分離方式を可能とする特例制度の創設などを求め、計画段階への早期移行に向けて取組を進めます。

「誇りある豊かさ―平和分野―」については、沖縄の過重な基地負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人・軍属による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。

基地の整理縮小については、建白書の精神に基づき、普天間飛行場の閉鎖・撤去を求めるとともに、1日も早い運用停止を日米両政府に求めてまいります。また、嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還については、統合計画の確実な実施とともに、内容の具体的な説明、地元意見の聴取の場の設置、跡地利用の円滑な推進等を引き続き政府に対して強く
求めます。

日米地位協定に関しては、沖縄県がドイツ、イタリアを調査した結果、両国が航空法など自国の法律や規則を米軍にも適用させ、米軍の活動をコントロールすることで、自国の主権を確立していることが明らかになりました。同じ主権国家として、我が国においても米軍に国内法を適用することなどを日米両政府に強く求めます。
当該調査については、イギリス、ベルギーに加え、アジア諸国等にも対象を拡大するなど、日米地位協定の問題点を更に明確化していきたいと考えております。

また、全国知事会においては、「米軍基地負担に関する提言」を全都道府県による全会一致で取りまとめ、政府への提言を行いました。引き続き、全国知事会をはじめ、渉外知事会や軍転協との連携を深め、沖縄の過重な基地負担の軽減に全力で取り組んでまいります。

跡地利用に際しては、沖縄発展のための貴重な空間として、県土構造の再編を視野に入れた総合的かつ効率的な利用を推進してまいります。

アジア諸国等の大規模災害時の支援活動や台風対策等について、本県が、国内外に貢献できるよう「国際災害救援センター」(仮称)の役割を検討するとともに、本県の地理的特性や歴史、沖縄のソフトパワーを活かし、国際交流、国際貢献を通じた平和の緩衝地帯の形成を目指してまいります。

「沖縄らしい優しい社会の構築―生活分野―」については、子どもの貧困対策の更なる推進を図るため、「沖縄県子どもの貧困対策計画」を改定し、小規模離島町村への支援の強化や子どもの居場所のネットワークの拡充、雇用の質の改善等に取り組むとともに、「沖縄子どもの未来県民会議」をはじめとした行政、民間等による幅広い支援体制を構築します。

子どもの貧困対策として、中高生のバス通学無料化に向け取り組みます。また、ひとり親家庭や生活に困窮する多子世帯などへの支援を引き続き推進してまいります。

待機児童の解消につきましては、「黄金っ子応援プラン」に基づき、市町村が実施する保育所等の整備や認可外保育施設の認可化の支援、保育士等の確保に取り組みます。

また、認可外保育施設の入所児童の処遇向上を図るため、保育環境の安全確保に取り組むとともに、引き続き給食費支援を行います。

放課後児童クラブについては、小学校等の公的施設を活用した設置促進等に取り組みます。

妊娠期から子育て期まで切れ目なく必要な支援を行う母子健康包括支援センターの設置を促進します。

女性がそれぞれのライフステージに応じて安心して生活し、様々な分野で持てる力を十分に発揮できる社会の実現のため、女性力・平和推進課(仮称)を新たに設置し、市町村や関係団体等と連携して取り組んでまいります。

また、北部圏域における医師不足を抜本的に解決し、安定的かつ効率的で地域完結型の医療提供体制を構築するための北部基幹病院の整備に向け、本年度に関係者間の基本的枠組みに関する合意形成を図り、次年度に基本構想、基本計画を策定するなど着実に取り組んでまいります。

北部地域への中高一貫校設置を推進するなど、中高一貫教育を充実させ、人材育成を図ります。

森や水及び水源地域に対する理解の促進と地域の振興を図るため、やんばるの森・いのちの水を守る取組を推進します。

本島周辺離島8村への水道水の安定供給と料金低減などを図るため、水道広域化に取り組みます。

また、県外都市部における移住相談会や移住体験ツアーの開催など、UJIターン者の持続的受入に向けた取組を推進します。

全ての県民の尊厳を守るため、人権啓発活動やLGBTの方々などへの偏見や差別をなくす取組を推進し、互いに尊重し合う共生の社会を目指します。

平成31年度に開催される「第43回全国育樹祭」を契機に、県民一体となった緑化活動を推進し、花と緑であふれる魅力的な県土の形成を図ります。

平成31年度の県政運営の「重点テーマ」として、「新時代沖縄への挑戦」、「沖縄らしい優しい社会へ」、「人口減少の克服と魅力ある地域社会の形成へ」、「県民一人ひとりに豊かな人生を」及び「県民の生命と暮らし、美ら島の自然と文化を守る」の5項目を掲げ、沖縄振興を力強く推進する施策に取り組んでまいります。

私は、職員が沖縄を愛する心と既存の価値観にとらわれることのない柔軟な発想と向上心をもって、持てる能力を発揮できる職場づくりを進め、限りある行政資源の下で、多様な行政需要に対応する政策実現型組織の編成に取り組んでまいります。

第4に、「内閣府予算案及び税制改正について」申し上げます。

平成31年度内閣府沖縄振興予算案においては、沖縄振興を推進するための経費として3千億円台が確保され、事業最終年度となる那覇空港滑走路増設事業などの経費が引き続き計上されたほか、子どもの貧困対策、沖縄健康医療拠点整備、北部振興事業などが増額となり、大規模災害時に想定される観光避難民への市町村対応の支援やソフト交付金を補完し市町村等の事業を推進する経費などが新たに盛り込まれました。
総額としては、概算要求の満額に届きませんでしたが、厳しい国の財政状況の中、平成30年度当初予算と同額が確保されました。
しかしながら、関係各位の御尽力にもかかわらず、県及び市町村が増額を強く求めていた沖縄振興一括交付金が平成30年度を下回り大幅に減額となったことについては、残念であります。
また、新年度新規となる沖縄振興特定事業推進費については、その活用を注視しつつ、ソフト交付金事業と相まってこれらの効果が高まるよう連携して取り組んでまいりたいと考えております。

平成31年度税制改正においては、7つの沖縄振興税制の延長及び航空機燃料税軽減措置の対象地域への「下地島」の追加が認められました。
県としては、沖縄振興予算及び税制の更なる効果的な活用を図るため、県を挙げて推進体制を強化し、最大の効果が得られるよう沖縄の振興に全力で取り組んでまいります。

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