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更新日:2012年12月21日
県知事表彰
中学生の部 最優秀賞 琉球大学付属中学校3年 末吉はるかさんの作品です。
「おじぃ、おばぁとどんな話すればいいんだろう・・・。」
緊張と不安が入り混じる中、私は門をくぐりました。今日はボランティアの初日。偶然学校で見かけた「夏休みボランティア体験」のチラシを見て応募したのです。
訪問したのは「特別老人養護施設」といって、障害を持つお年寄を介護する施設でした。しかし、「障害」を持っているといっても、みなさんとても元気で明るい方ばかりで、とても驚かされました。
時計の針が午後0時をさしました。昼食の時間です。私は、Tさんという、寝たきりで自分で食事する事ができないおばあさんの食事介助をさせてもらいました。介護士さんの見よう見まねで彼女の口へスプーンを運びました。ミキサーでトロトロにされたおかずをこぼさずに寝ている方に食べさせるのは、見た目より難しく、悪戦苦闘してしまいました。Tさんの口の周りはこぼれたおかずで汚れ、それを見て私は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
「はぁ。やっぱり自分には難しかった・・・。」気を落としていると、介護士さんがやって来て私にこう言いました。
「よし、これからTさんの食事介助は君ね。」(え、なんで!?)
下手で迷惑をかけたのに、どうしてまた私なんだろう。その理由はわからないけど、とにかく明日は今日より上手に介助しようと目標をたて、次の日に挑みました。
午後0時。昼食の時間です。
「よしっ、がんばるぞ!」
気合を入れて、私は黙々とTさんの口へご飯を運び続けました。すると、おかずがキレイに口の中へ入っていきます。その後もちゃんと食べさせる事ができたのです。
「なかなかコツを掴んできたじゃないか。」介護士さんが優しく微笑みました。
「じゃあ明日はTさんが楽しめるようにしてごらん。一生懸命な君の気持ち、すごく伝わってくるよ。でも、会話のない食事なんてつまらないだろう?一番に相手を想って接してごらん。それが介護で一番大切な事なんだ。」
今まで私は自分の事で精一杯で、ちゃんと食事させる事ができただけで自己満足し、相手の気持ちなんて考えてなかった。この二日間、Tさんにつまらない思いをさせてしまった。明日で最後だ、がんばらなくちゃ!
そして最終日。Tさんはいつものように長イスに寝ていました。
「Tさん、今日もよろしくお願いしますね。」ぎこちなかったけど、なんとか言えた!
「今日もすごくおいしそうですよ。まずはご飯から食べましょうか。はい、どうぞ。」パクッ。不思議そうに私を見つめながら、Tさんはモグモグとご飯を食べました。
「この煮物、すごくおいしそうですよ。はい、どうぞ。どうですか、おいしいですか?」私の問いかけに答えるように、どんどん食べついに完食です。
「Tさん、本当にありがとうございました!」
───ありがとう。
Tさんの声が私の心に届きました。
世の中には、普段私達が当たり前にしている事ができない人達がいます。Tさんのようにお話できない人は、今して欲しい事、考えている事、感じた事を声に出せずにいるのです。介護士さんが言ったように「相手の事を思いやる心」ほど大切なものはありません。Tさんとの出会いが、それを教えてくれました。
私は、彼女と違って歩けるし、話す事もできます。この足を使って、これからどれくらいたくさんの人を手伝う事ができるだろう。私の言葉でどれくらいの人を救えるのだろう。神様がせっかくくれた体なのだから、世界中でSOSを出している誰かのために使いたい。今回、この体験を通して、自分自身成長する事ができたし、将来の自分を見い出す事ができました。
広げよう、心の輪──。小さな思いやり
が積み重なれば、きっと世界中は平和になる。
いつの日か、その日が訪れる事を信じて─。
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